2017年12月10日日曜日

『XLISIS (エクリシス)』を語る AINOTAMENISHIS、GENTOインタビュー




AINOTAMENISHIS(愛のために死す)のリーダー、ボーカリスト、
そして全ての楽曲の作詞・作曲を手掛けるGENTOへのメール・インタビュー記事となります。
『XLISIS』を既に聴いた方、これから聴く方に楽しんで頂けたらと思います。


※完成したサード・アルバム『XLISIS』を自身で聴いてどんな感想を持ちましたか?

Gento (以下G):恰好いいものができたと思いました。

※『XLISIS』は歌詞や楽曲、音像など様々な面で前2作とは全く違った作品に仕上がったと思います。制作時に持っていたヴィジョン、イメージ、コンセプトなどがあれば教えてください。

G:録り始めたのが3年位前になるのではっきりとは覚えていないですが、“近未来的な冷たさ”のようなものを表現したいという気持ちはあったと思います。

※“近未来的な冷たさ”というのは非常に感覚的な言葉ですが、もう少し詳しく説明することは出来ますか?

G:イメージというのは感覚的なものなので、曖昧さが重要です。それを分かりやすく“SF的”とか“ディストピア的”というような一言にまとめてしまうと、個々人が想像するための重要なニュアンスが消えてしまうので、あまり何々的と言うのは気が進まないのですが、、、。

※例えば、作品を聴いて“スロッビング・グリッスルと『AKIRA』をまとったストゥージズ”のような印象を受けました。その近未来的な冷たさを“スロッビング・グリッスル的”、“AKIRA的”と表現するのはどうでしょうか?

G:そういう風に捉えられても構いません。

それから、このアルバムで現政権が象徴している様々なものに対して、自分は反対だという意思を示したいとも思っていました。この国の状況に対する不信感や閉塞感、怒りや絶望感を無視することは出来ないという思いが、ある種の冷たさを表現したいという欲求に繋がったのだと思います。ただ、こんなに暗い世の中でひたすら冷たいだけのものは作りたくないので、最終的には「だからなんだよ、やってやるぜ」という気持ちになるようなアルバムにしたかったし、そういうアルバムになっていると思います。

まあ、簡単に言ってしまえば、今のこの日本で、自分の場合は東京で暮らしている、自分にとってのリアリティを表現したいと思ったということです。

※そういったリアリティを表現するにあたって音像の面で意識した点はありますか?

G:レコーディング前にレーベル側とは他で聴いたことのないような立体的な音像にしたいという話をしました。

ひたすら生々しく、混沌としていて熱くヒリヒリしたものをそのままぶちまけるイメージと、その熱をぶちまけるのではなく氷やガラスの中に入れるイメージをアルバム全体の音像に対して持っていたと思います。

ただ、作っている本人としては1曲、1曲のミックスが最重要で、全曲のミックスが出来上がることで自ずとアルバム全体の音像も決まってくると思っています。

※熱と氷、熱とガラスといったイメージはよく分かります。『エクリシス』ではクールでモダンな音像と、生々しい歌と演奏が常にコントラストを描いています。それから、歌詞の面でも聖と俗、生と死といった具合に対立的世界観が横溢しています。

G:歌詞や曲で対立的世界観を表現しようと思っていたわけではないのですが、自分が非常に矛盾した人間なので、極端に違うものが1つの曲や歌詞のなかに内包されていたり、分裂しているものになるんだと思います。

※収録曲”I LOVE YOU,BABY”はアルバムの中でもとても重要な曲だと思います。そして、この曲からはヒップホップ的な要素も感じられます。ヒリヒリとしたサウンドからはKOHHの“Die Young”等とも共通するフィーリングも感じました。ヒップホップから受けた影響があれば教えてください。

G:”I LOVE YOU,BABY”という曲はヒップホップからの影響は受けていないし、この曲はKOHHの“Die Young”が発表される2,3年前くらいにできた曲なので、“Die Young”とも関係ありません。ただ、最初この曲は同じベース・ラインが繰り返されている上に語りだけを入れる曲にするつもりだったので、語りの音楽という点ではやろうとしていたことはヒップホップとそう遠くなかったと思います。

それからヒップホップは大好きですが、ロックから受けた影響はなにかと訊かれても、ロックはもう完全に自分の中にあるものなので、一言で「自由であれということかな」みたいには答えられないのと同じで、ヒップホップから受けた影響を簡潔に言葉にするのは難しいです。



※ヒップホップで好きなアーティストを幾つか教えてください。

G:Playboi Carti、21 Savage、Metro Boomin、Rihanna、OmenⅩⅢ、smokepurppなどです。

※ヒップホップ的な要素もあると書きましたが、『エクリシス』は完全にロックンロール・アルバムだと思います。自身も好きであろうINUや村八分、ガセネタ、RCサクセション、ブルーハーツ、エレファントカシマシ、ブランキー・ジェット・シティといった日本のロックの系譜に連なる音楽の最新版だという思いはありますか?

G:それは聴いてくれる人がどう感じるかということで、特に自分から言うことはありません。

※最後に、『XLISIS』で初めてAINOTAMENISHISを聴く人も多いと思います。音楽、映画、小説、漫画等々、何でも良いので、単純に好きな作品やアーティストを幾つか教えてください。

G:いま日常的に聴いているわけではないですが、一番強い衝撃と影響を受けたのはNIRVANAです。それと同じ意味あいで作家は中上健次、漫画家は岡崎京子です。好きな映画は多くて決められないです。


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2017年9月26日火曜日

AINOTAMENISHIS(愛のために死す) / XLISIS (エクリシス)



アーティスト:AINOTAMENISHIS(愛のために死す)
タイトル:XLISIS (エクリシス)
カタログ番号:RRCD01
発売日:2017年11月8日
フォーマット:CD
録音:清岡秀哉
写真:安珠
デザイン:清岡秀哉
定価:¥2000+税





土着と洗練を楽しむ音楽専門店 レコンキスタが始める音楽レーベルの第一弾!
コアな音楽ファンから熱烈な支持を受けるロック・バンド AINOTAMENISHIS”、7年ぶりとなるサード・アルバム!

”井手健介と母船”のメンバーでもある清岡秀哉をプロデューサーに迎えた本作、 2作とは比べ物にならないくらいに表現の幅を広げた傑作となっています。“過激”や“衝動的”と評されることの多かったファースト、 情緒的な要素を加えたセカンド、そして、本作ではそれらの要素を呑み込みながら、 更なる高みへと到達。野良犬の獰猛さを振り回しているような歪で荒くれた楽曲を、モダンでクールな音像で捉えたサウンドは、優等生が目立つ現代のロック・シーンの中では 異質な存在に思えるかもしれませんが、ロックンロール本来のあるべき姿を映し出しているともいえるでしょう。

その堂々たる音の佇まいからは村八分やガセネタ、INU等に共通するフィーリングを持ちつつも、いわゆるアングラにはとどまらず、RCサクセション、ルースターズ、ブルーハーツ、初期のエレファント カシマシ、ブランキー・ジェット・シティといったオーバーグラウンドの日本ロック史への挑戦ともとれるような心意気が感じられます。

また、時代に対して激しい怒りをもって“物言う精神“を実践している様子は、現行のロック以上にヒップホップ的であり、不安や違和感、揺れる心情を鋭利な表現として昇華させていくパワーはP.I.Lのようであり、退廃した都会に息衝くブルース性を浮き彫りにさせていく世界観は、スーサイドやセルジュ・ゲンズブールをも想起させる魅力があります。

モダンな感性と危うい情感が高次元でブレンドされた極上のロックンロール・アルバム。 知性と情念の煌めきをクールでヒップ、そして猥雑に捉えた本物のロックをお楽しみください。

壊れかけのテープレコーダーズの遊佐春菜(オルガン)、清岡秀哉(スティール・ギター、ギター、シンセサイザー)がゲスト参加

※ジャケットは写真家 安殊によるもの。
(音楽ファンの間ではYMO主演の映画『プロパガンダ』の出演でも知られています。)

【AINOTAMENISHIS(愛のために死す) プロフィール】
ポートランドのレーベルHoly Mountainから『LIVE'418』、ギューン・カセットから『部屋と夢』をリリース。そして、Record Shop Reconquistaによる音楽レーベル第1弾として『XLISIS』をリリース。